グローバル内部監査基準の公開草案への海外の公的機関のコメント

目次

海外の公的機関は動いた

内部監査人協会(IIA)のグローバル内部監査基準の公開草案について、内部監査人協会(IIA)は、寄せられたコメント数を公開しましたが、コメント内容は公開していません。

前回、このWebsiteでは、海外の3人の内部監査のプロフェッショナルのグローバル内部監査基準の公開草案へのコメントをまとめて掲載しました。今回は、海外の公的機関が、内部監査人協会(IIA)に寄せた公開草案へのコメントを、それぞれの機関がWebsiteで公表しているものをまとめてみました。

  • 米国会計検査院(United States Government Accounting Office)
  • アカウンタンシー・ヨーロッパ(旧名称:ヨーロッパ会計士連盟)(Accountancy Europe)

それぞれの公的機関が、内部監査の国際基準を自分事と考えてコメントしていることがわかります。

また、本ページの終わりで、2023年9月~10月にIIAのパブリックコメントに対する取り組みが垣間見えた件をお伝えします。

本ページの内容のご理解や使用にあたっては、必ずご自身で原本を参照してください。

米国会計検査院(United States Government Accounting Office)

米国会計検査院(GAO)は2023年5月30日付けで、内部監査人協会(IIA)のグローバル内部監査基準の公開草案に次の通りコメントを寄せ、それをWebsiteで公表しています。つぎをクリックし、さらにFull Report(10Pages)をクリックすることで、ダウンロードできます。

May 30, 2023, letter commenting on the Institute of Internal Auditors’ Global Internal Audit Standards 2023 Draft for Public Comment

具体的なコメントの一部は次の通りです。米国会計検査院が政府組織の中で監査を実施する観点からのコメントが見られます。

  • 領域 III 内部監査部門へのガバナンス
    • 領域 IIIの構成は、基準の適用を受けない個人またはグループ(取締役会)に対する要求事項を中心に構築されているため、問題があると考える。取締役会の関与は重要であることは認識しているが、我々はIIAに、本基準の対象でない個人またはグループ(取締役会)に対する要求事項を削除するために、本領域を再構築または削除することを提案する。
  • 原則2「客観性を維持する」と原則7「独立した位置づけ」について
    • 我々はIIAに、原則2「客観性を維持する」と原則7「独立した位置づけ」の各基準の要求事項を統合することを提案する。客観性と独立性の概念は密接に関連しており、独立性の毀損は監査人の客観性に影響を与える。我々はさらに、IIAに、組織内の信頼され公平なリソースとしての内部監査の評判をさらに高めるために、客観性と独立性に関連する要求事項を強化することを提案する。
  • 「must」と「should」の使用
    • 我々は、提案された基準が、”must”、”should “及び “may “の使用に関して、基準の使用方法の項で概説した原則を一貫して遵守しているとは考えていない。我々は、基準が「考慮事項」の項で “must “を使用し、「要求事項」の項で “should “を使用している例を特定した。その結果、その文章が無条件の要求なのか、望ましいが必須ではない実践なのかを判断することが困難であることがわかった。我々は、IIAに、最終的な基準を注意深く見直し、用語が「基準の使用方法」に示されたとおりにのみ使用されるようにすることを提案する。

米国会計検査院(GAO)は、このほか、品質評価やコンピテンシーについてもコメントしています。

アカウンタンシー・ヨーロッパ(旧名称:ヨーロッパ会計士連盟)(Accountancy Europe)

アカウンタンシー・ヨーロッパ(旧名称:ヨーロッパ会計士連盟)(Accountancy Europe)は、2023年5月30日付けで、内部監査人協会(IIA)のグローバル内部監査基準の公開草案に次の通りコメントを寄せ、それをWebsiteで公表しています。つぎをクリックし、さらに右上の黄色のDownloadをクリックすることで、ダウンロードできます。

IIASB’s proposed Global Internal Audit Standards

アカウンタンシー・ヨーロッパは、一般的な考え方を述べた後に、詳細編で公開草案について具体的にコメントしてます。具体的なコメントの一部は以下の通りです。会計士の業務として内部監査と連携する観点や、内部監査のアウトソースを受託するコンサルタントの観点からのコメントが見られます。

  • 基準の構造と用語集
    • 本基準の構造については、現行版の基準と比較して分かりやすくなっている。しかしながら、本基準は全くもって長文のため、必須要件、条件付き要件、任意要件、及び、実施上の「ガイダンス」を区別するために、さらなる明確化が非常に有用であると思われる。
    • この点に関して、IIAは、例えば、取締役会のみ、又は、CAEに関連する基準をフィルタリングできるような、電子的でユーザーフレンドリーなバージョンを提供すべきである。
  • 領域 I 内部監査の目的
    • 目的の声明では、内部監査が、組織体が公共の利益に資する能力を強化することを主張している。会計士や監査専門職の特徴は、公益のために行動する責任を受け入れることである。しかし、これがあらゆる種類の組織体に当てはまるかどうかはわからない。我々はむしろ、目的の声明に、内部監査が、組織体のESG目標を達成する能力を強化することを記載すべきであると考える。
  • 領域 II 倫理とプロフェッショナリズム
    • 内部監査は、その成り立ちから潜在的に独立性と客観性が損なわれる可能性がある。また、内部監査をアウトソースする場合は、これについてさらなる取締役会の特別な注意が必要となる。したがって、基準に、このようなケースに関連する追加ガイダンスを含めるべきである。
  • 領域 III 内部監査部門へのガバナンス
    • 企業が、内部監査部門全体、又は、一部の内部監査をアウトソーシングするかもしれない。この場合、効果的なコミュニケーションと監査業務の品質の一貫性を確保することが、企業を管理する責任を負う者にとって重要な関心事となる。この点に関して、IIAは本基準のこの領域に具体的な考慮事項を追加することを検討すべきである。

アカウンタンシー・ヨーロッパは、このほか、領域IV 内部監査部門の管理、領域V 内部監査部門の業務についてもコメントしています。

IIAのパブリックコメントに対する現在の取り組みが、雲の向こうに垣間見えた

「国際基準」は、内部監査が組織体に価値を提供するのに役立つものでなくては意味がありません。掲載の通り、海外の内部監査の専門家や公的機関が今回の国際基準の改定について、疑問や改善の要望を投げかけています。国内の内部監査部門長から国際基準改定の影響について相談がある都度、これらの海外の意見を伝えると、自分の懸念していた通りだとおっしゃる方もおられますし、自分の知る限り日本の内部監査専門家や公的機関の意見が聞かれないのは残念だとおっしゃる方もおられます。

(以下は、私個人の意見です)

こうした中で、一般社団法人日本内部監査協会主催「第57回内部監査推進全国大会(2023年9~10月)」で、Paul Sobel氏*1が、「The Proposed Global Internal Audit Standards What Do You Need to Know?」の表題でビデオ講演をされたのは、まさに時宜を得たものでした。講演は、IIAのパブリックコメントに対する現在の取り組みが、雲の向こうに垣間見えるものでした。残念ながら雲の向こうの様子は、流動的であり拡散してはいけないということで、触れることはできませんが、今回の「国際基準」改定の行く末を案じる私にとって、価値のあるものでした(あくまで、私個人の意見です)。

今後、2024年初に発表される予定のグローバル内部監査基準の最終案が、これまで国際基準をもとに内部監査の品質改善に取り組んでこられた多くの内部監査の実務家の方々の腹に落ち、品質改善に役立つものであってほしいと願ってやみません。

*1:Paul Sobel氏、IIAの国際大会でたびたび講演され、分かりやすい話を聞かせてくれます。彼は、2013年~2014年にIIAの会長を務め、また2018年~2022年にCOSOの会長を務めています。また、彼はIIAから出版された「Internal Auditing Assurance &Advisory Service(邦訳名:内部監査 アシュアランス業務とアドバイザリー業務)の共著者の一人です。