グローバル内部監査基準の公開草案に寄せられたコメントの分析結果

内部監査人協会(IIA)は公開草案に寄せられたコメントの分析結果をまとめ公表していました

内部監査人協会(IIA)は、グローバル内部監査基準の公開草案に対し寄せられたサーベイ回答1612件に記載された約19,000件の具体的なコメントを整理し、2023年10月6日、12の課題にまとめWebsiteで公表していました。記事はIIAのホームペ―ジの深いところあります。次の手順でアクセスしてください。

  1. Theiiaと打鍵し、IIAのホームページにアクセス
  2. 最上部のメニューから「Standards」をクリック
  3. 中段のNew Standards are comingの緑色の小さな楕円形「Get Started」をクリック
  4. IPPF Evolutionのはじめの3行の記事とGlobal Internal Audit Standards Milestonesの間の2つの緑色の小さな楕円形のうち「READ THE OCTOBER UPDATE」をクリックする
  5. 記事が表示されます

寄せられたコメントは12の課題に集約されています

寄せられた19,000件のコメントは、次の通り12の課題に集約されています。当サイトでご紹介した、「海外の内部監査のプロフェッショナルのコメント」、「海外の公的機関のコメント」との関連を分析してみましたが、いくつか関連が明らかなものもあるものの、内部監査人協会の公表内容は短文で説明もなく、実際にどれだけカバーされているかは不明です。

公表は英語のみで、日本語の翻訳はありません。以下は、私の試訳です。必ずご自身で原文にあたり、ご自身の責任でご利用ください。

  • must(しなければならない)が多用され、グローバル内部監査基準が規則ベースになりすぎているように思える
  • 外部評価の要求事項が不明確
  • グローバル内部監査基準の公的機関や小規模内部監査部門への適用可能性
  • 内部監査の目的における専門用語(terminology)の欠落や曖昧さ
  • すべての内部監査人に対する、20時間の継続教育と特定の能力の要求事項
  • 取締役会の活動の要求事項を、あまりにも直接的な言葉で述べている。そして最高経営者(社長など)の責任が述べられていない
  • 内部監査の負託事項(Internal Audit Mandate)と内部監査基本規程の区分が不明確
  • 内部監査の業績(パフォーマンス)の適切な測定方法の混乱
  • アシュアランス業務およびアドバイザリー業務の両方に対する要求事項の適用可能性
  • 発見事項に関する内部監査人の改善のための提言作成の要求事項
  • 発見事項と最終監査報告書におけるレーティングとランキングが要求事項と受け取られる
  • 最終監査報告書における、適合または不適合の宣言の要求事項

Paul Sobel氏の講演と同時期に分析結果を公表。最終版のグローバル内部監査基準の公表は、来年初に

 今回お伝えした内部監査人協会が公表した記事は、2023年10月6日付けです。ちょうど、前回記事に書いた一般社団法人日本内部監査協会主催「第57回内部監査推進全国大会(2023年9~10月)」で、Paul Sobel氏*1が、「The Proposed Global Internal Audit Standards What Do You Need to Know?」の表題でビデオ講演をされたのと同時期です。公表内容の一部が、彼の説明と重なるのは当然の事かと思います。彼の説明の方が少ない情報ながら分かりやすかったことから、もう少し丁寧に公表していただけたらよいと考えます。

 ご存じの方も多いと思いますが、日本人で唯一内部監査人協会(IIA)の会長職を務め、国際基準の普及をテーマに活躍された毛利直広氏が、グローバル内部監査基準公開草案への多くのコメントが集中した直後の2023年7月、内部監査人協会の国際内部監査基準審議会(IIASB)の委員長に選任され、今回の事態の打開を図る先頭に立たれています。

 毛利直広氏の国際内部監査基準審議会委員長就任の挨拶はここをクリックし、すこし下にスクロールし、「Hear from IIASB Chair Naohiro Mouri」の再生ボタンを押すと視聴できます(英語のみ)。CCボタンで英語字幕が表示されます。

 グローバル内部監査基準の最終版は、2024年初めに公表されるとのことです。寄せられた多くのコメントに真摯に対応し、グローバル内部監査基準が、内部監査の品質改善に役立つ存在になることを、内部監査部門長の友人たちと願ってやみません。